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特集記事
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【ランクル紀行】難波 毅

2015.01.30

世界のランクルからこんにちは

独自進化したオーストラリアのピックアップ

_D3S8293VDJ79ダブルキャブ。GXLグレードはオーバーフェンダー、アルミホイール、275/70R16タイヤ、フォグランプ付メッキバンパーなどが外観上の特徴。

新しくて古い70系ダブルキャブ

昨年8月25日、10年ぶりにランドクルーザー70系が日本市場に戻ってきた。今年6月までの限定で発売が再開され、あっという間にメーカーの想定していた2,000台という販売予想台数を超えてしまった。今までのランドクルーザーファンからの注文は当然だが、初めてランクルに乗るというユーザーもかなりの割合を占めるというからうれしい限りだ。
また、事前の予想では官公庁向けが主体かと思われたダブルキャプ・ピックアップだが、実は個人のオーダーが多いと聞き、日本でもピックアップ文化が花開くかとちょっと期待してしまう。
日本では昨年のことだが、この79ダブルキャブ・ピックアップは2012年8月にシリーズに導入された、ランドクルーザー70系の中で一番新しいモデルである。搭載エンジンは1GR型ガソリン、1HZ型ディーゼルおよび1VD型ターボディーゼルエンジンの3種で、右ハンドル、左ハンドル仕様があり世界中に輸出されている。今回はオーストラリアにしかないちょっと変わったダブルキャブ・ピックアップを紹介しよう。

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仕事の目的に合ったワンオフの荷台を架装して使うことが多いので、ピックアップではなくキャブシャーシーが人気だ。車両を買い替えても、特製の荷台は載せ替えて使い続けることが普通だ。

 

オーストラリアの特殊性

実は、オーストラリア向けのピックアップモデルのガソリンエンジン車は、1985年の発売開始から輸出されておらず、ディーゼルエンジン車も2001年11月以降は輸出されていない。ピックアップはすべてキャブシャーシーモデルとして輸出され、現地で荷台を付けて販売されているのである。この輸出形式は現在でも変わらず、ダブルキャブモデルも例外ではない。トヨタ・オーストラリアがデッキ(荷台)を純正アクセサリーとして販売しているので、これを装着してピックアップとなるのだ。
オーストラリアでは一般的にピックアップを「ユート」と呼ぶ。Utility(実用)という単語が短縮された言葉で、オーストラリアでしか通用しないが、アメリカ人やイギリス人に説明すると、なかなか良くできた呼び方だと感心されることが多い。そのユートはほとんどが高床デッキで、荷台にはタイヤハウスのでっぱりがない。また、低いアオリは3方開きで、外すことができる。
農場などではいろいろな道具、機材をたくさん載せて、現場でそれらを下して使うことが多い。そのためには出っ張りがなくアクセスの良さが求められる。また、鉱山などでは特装のデッキを架装することが非常に多いので、いわゆるピックアップのデッキは不要だ。そういったオーストラリアならではの使途特性が、こうした特殊な輸出形態とさせているのだろう。

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VDJ79ダブルキャブ・ユート。横から見るとトレイと呼ばれる荷台が高床なのがよく分かる。

108385_HZJ75_double_cab_retouch西オーストラリア州の鉄鉱山の町ニューマンで見かけたHZJ78ダブルキャブ。鉱山会社がカスタムしたもの。仕事本位なので後ろに付け加えたボディーにはオリジナルに合わせようとした努力は感じられない。質実剛健モデルだ。

 

系譜は40系から

トヨタがランドクルーザー・ダブルキャブを自ら作ったのはわずか3年前のことであるが、オーストラリアでのダブルキャブ・ピックアップの歴史は意外と古く、何と40系の時代にまでさかのぼる。当然、ボディーの後半部分はトヨタ製ではない。各地のカスタムメーカーが独自にダブルキャブを製作していた。シングルキャブの背面をカット、そこにリアボディーを追加する。40系は側面が真っ平らだから加工は簡単だ。ルーフの造作も単純だった。鉱山などでは、それぞれが専用のデザインでたくさんの40をダブルキャブに改装して使っていた。
この状況は1985年に70系が発売されても変わらなかった。側面に曲線が取り入れられ、凹型のプレスラインも入ったので、ボディー製作の加工度は格段にレベルが上がった。そこにカスタムメーカーの個性が発揮されたのだ。40系でもそうであったが、ユーザーは鉱山が圧倒的に多かった。
余談だが、1979年に40系に#J45ロングバン(通称トゥループキャリア)が発売されたときに、オーストラリアでちょっとした騒ぎが起きた。各地のカスタムメーカーがこのトヨタの動きに怒ったのだ。「なぜ我々弱小メーカーが開発したロングバンをトヨタ自身が造るのだ。なぜ我々の商売を奪うのか」と。カスタムメーカーがいつごろからロングバンを製作していたか定かではないが、1979年といえば24年間続いた40系の生産が終わる5年前、…なぜ今頃になってと思う気は分からないではない。

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クイーンズランド州の石炭鉱山がカスタムしたHJ47ダブルキャブ。リアドアはフロントドアの流用。リアの曲面ガラスやルーフの加工など美しく仕上がっている。荷台はほんの少し荷物が積めるだけで、人員輸送を主目的にしている。

 

2007年3月に4ドアワゴンのVDJ76が発売されてからは、このリアドアから後ろを切り取ってダブルキャブにすることが“流行”った。この方がはるかに楽に、美しくダブルキャブになる。現在トヨタが「純正」で販売しているモデルとほとんど変わらない出来栄えだった。さらにシャーシーを500mm延長して長いデッキを架装するなど、多種多様のダブルキャブが生まれ出た。

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クイーンズランド州ブリスベンのクリエイティブ・コンバージョン社でダブルキャブに改装されるVDJ76。決して安くはない新車の荷室部分を惜しげもなくカットして、リアパネルが溶接されている。

 

なぜ今ダブルキャブ

そして2012年、満を持して本家の登場と相成った。30年前に登場した70系は今、生産のピークを迎えている。こんな車がほかにあるだろうか?
世界中の70系のユーザーは現状の変化を求めていないし、トヨタも、ますます厳しくなる環境や安全に対する規制、基準に対しては対応させつつも、70系に不必要な変更をするつもりはないだろう。
世界で求めるユーザーがいる限り、新たな安全・環境基準に応えようとしながらも、そうしなければならない宿命を持ったクルマなのである。

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高床のトレイは食事のテーブルにぴったり。純正のトレイはアルミ製とスチール製があり、床は材木張りとチェッカープレート張りが選べる。それぞれ普通仕様とヘビーデューティー仕様が用意される。

 

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斜め後ろから見ると高床のトレイとボディーの関係がよく分かる。床の高さは作業するのにもちょうどいい高さだ。

 

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搭載されるのは排気量4,461ccの1VD-FTV型DOHCターボディーゼルエンジン。オーストラリア仕様の70系にはこのエンジンしか搭載されていない。超フラットトルクのエンジンは面白味には欠けるかもしれないが、とにかく扱いやすい。

 

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トレイがボディーより少しはみ出るので、リアビューミラーのステーも横に張り出している。ミラーは平面型である。

 

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ダブルキャブは、4ドアワゴンと同じ130リットルの燃料タンクをトレイ下に装備する。一方シングルキャブは、ホイールベースは3,180mmと変わらないが、ボディーの下にタンクを吊り、リアの増槽タンクと合わせて180リットルの燃料を積める。

 

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アオリを倒すと広くてフラットな荷台となる。アクセスの良さは抜群で、ちょっとオーバーサイズの荷物を積むのにも便利だ。このモデルはチェッカープレート張りのトレイだった。

 

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「トヨタ純正トレイ」というステッカーが貼られた荷台の床下には、スペアタイヤを収納するスペースがある。操作方法は簡単、汚れたタイヤでも気にすることなくしまえる。

 

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2人でこれだけの撮影機材やキャンプ道具、食糧、その他の荷物を積んで移動した。濡れたり、土埃がかかったりしてもいいモノをトレイに、撮影機材などはもちろん室内後部に積んだ。