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特集記事
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【ランクル紀行】難波 毅

2015.06.05

世界のランクルからこんにちは

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季節によってエアーズロックへの朝日の当たり方は変わる。訪れた時期は全面には朝日は射さなかったが、素晴らしい雲のパターンを見ることができた。雲が適度にあると空の広さが強調され、スケール感にあふれた光景となる。

 

####前文####

4人の男たちが船で運んだ愛車でオーストラリアを走った50日間の旅は間もなく終わる。今回は「西オーストラリア&エアーズロック」編を旅の最終地であるメルボルンから報告する。

 

####変わりゆく“辺境”####

先月報告したシンプソン沙漠横断を経て一路北上、世界遺産であるカカドゥ国立公園を訪ねた後、一行は西へ歩を進めた。行く先はキンバリー地方。オーストラリア大陸の3分の2を占める西オーストラリア州の北部熱帯地域である。

そこは太古の海底が隆起してできた丘陵地帯で、標高は250mほど。独特の形をしたバオバブ(オーストラリアでは「ボアブ」となまって発音される)の木がたくさん生えていることで有名でもある。たくさんの牛放牧牧場が点在し、牧畜業が観光とともに主要産業のひとつとなっている。

キンバリー地方の真ん中を通るのがギブリバーロードだ。東のカナナラから西のダービーまで延長700㎞ほどの全線ダートの道は、もともとは牧場からの牛の出荷のために作られたビーフロードであるが、最近では観光客がこの道を走ることを目的に遠くから四駆でやってくる。

季節は5月から9月の乾期と11月から3月の雨期に分かれる。今回は4月下旬に訪れたが、雨期の道路ダメージがまだ各所に残り、「閉鎖」区間が多く残っていた。

ギブリバーロードといえばかつては悪路の代名詞のようにいわれたが、毎年のように道路状況は改善されつつある。3年前にコルゲーション(ピッチの短い波状路)で散々悩まされた道は、翌年にはかなり改善され、今回はほとんど存在さえ感じられないほどにまでアップグレードされていた。牛を運び、牧場で暮らす人々が生活に使う道だからどんどん良くなるのは当然といえば当然である。

キンバリー地方は“オーストラリア最後のフロンティア”と呼ばれているが、今やそれは観光客に向けたキャッチフレーズとなりつつある。

 

####すべてがスケール違い####

キンバリー地方の南側に位置するのがピルバラ地方である。リオティントとBHPビリトンという資源メジャーが、世界最大級の鉱山で鉄鉱石を採掘していることでもよく知られている。内陸に位置する鉱山から鉱石を600㎞離れた港まで運ぶのに鉱山会社は自前の鉄道を敷設している。その線路を守るために作られた線路脇の「アクセスロード」を観光客も走ることができる。

ローボーンの観光案内所で、20分ほどのガイダンスDVDを見て申請書にサインして出発する。もちろん舗装はされていないが、大型の車両も走るので道幅もあり普通に走行できる。日本では決して見ることができない、大型の機関車が3重連で牽引する長大編成の鉱石列車に、一行の中の「鉄ちゃん」は大興奮、夕方暗くなるまでカメラを離すことはなかった。 鉄道の規模といい、長さ2㎞にもおよぶ列車の規模といい、鉱山で働くトラックの大きさといい、すべてが想像をはるかに超えるスケールに一同は声もなかった。

####大陸最西端に立つ####

ピルバラ地方の鉄鉱石は、太古の海に存在した鉄が光合成をおこなうストロマトライトという藻が出す酸素で酸化され、酸化鉄となって沈殿したものだという。そのストロマトライトを現在でも見ることができるのが、ピルバラ地方の南に位置するシャークベイである。大きな入り江になっていて海水の出入りが少なく、強烈な太陽光のため塩分濃度が普通の海水の2倍もあり、生存できる生物が限られるためにストロマトライトが今も生息できるという。近くには、その塩分濃度で生きていける特殊な2枚貝の貝殻だけでできたシェルビーチという真っ白な海岸も広がる。

さらにそこからオーストラリア大陸最西端のスティープポイントに行くことにした。大陸最東端のケープバイロンと違って、ここへは四駆でしか行けない“秘境”で、国立公園になっている。幅広いハイウエイのようなダートは、やがて深い砂の一本道へと変わる。釣りの名所でもあるのでトレーラーを引っ張って砂丘を越えてきた釣り人たちが海岸でキャンプをしていた。1台で進むのもなかなか苦労する道を、トレーラーを引いて来るオージーの大胆さに脱帽であった。

 

####海岸沿いの奇景####

西オーストラリア州の州都パースの北には海岸砂丘が多く存在する。セルバンテス近くのピナクル砂丘では、淡黄色の砂丘から石灰岩の柱が墓標のように突き出す光景を見ることができる。かつての海底が石灰岩となり、その上に砂が堆積。雨の作用により、地下で石灰岩の柱が育ったと解説されるが、成り立ちについてはそれ以外にも諸説あるとのこと。いずれにせよ簡単には想像もできない自然のメカニズムに驚かされるのみである。

国立公園内にはクルマで走れる一方通行のルートが設けられているが、歩くぶんには自由に砂丘内に入っていくことができる。なんといっても美しいのは夕暮れ時。インド洋に沈む太陽の最後の光に石柱が照らされ、色を変えていく。

一方、パースから東へと進むと同じ石灰岩だが広大な大地となる。ラテン語で「木がない(No Tree)」という意味のナラボー平原だ。石灰岩は水を保持することができず、大きな木が育たない。平原の南端を走るエアーハイウエイからではそれほど実感できないが、100㎞ほど北、平原の真ん中を貫く大陸横断鉄道からは赤茶けた大地にいじけたブッシュが点々とする、まさにNo Treeの様子がはっきりとわかる。

この平原は、南端で断崖となって一気に終わる。まさに「地の果て」である。一行はナラボーロードハウス近くから細いダートをたどって、断崖ぎりぎりまで近づいて地の果てを実感した。

 

####最後にとっておき####

オーストラリアでもっとも有名な観光地といえばエアーズロックはその代表格であろう。今回の旅で最初に訪れるという手もあったが、あえて最後に回した。ここを最初に見てしまうと、あまりの衝撃にほかの光景が霞んでしまうのではと心配したからだ。それくらいのインパクトがあると、少なくとも私はそう思っている。周囲になにもない赤い大地から高さ300m以上に突き出す砂岩の一枚岩、エアーズロックの存在感はとてつもなく力強い。

今回はお天気に恵まれず朝焼け、夕焼けとも曇りがちの鈍いシーンとなったが、それでも十分に美しい光景が楽しめた。特に2日目の夕方は雲が厚く、多くの人が夕景を見に出かけもしなかったが、最後の一瞬にどんでん返しがあった。まさに自然畏るべしである。

クルマを受け取って走り出して50日間、約1万9,000㎞を走破して3台とも無事メルボルンに帰り着き、クルマを日本へ送り返す準備もすべて終わった。大陸は大きくて西半分しか回ることはできなかったが、短い休みではなかなか行きにくいところを重点的に見てきた。

2カ月の休みを取り、車を船で外国に運びその国を走る…。なかなか簡単には実現できないことだが、いろいろ苦労してそれを実現させた。それだけに感動も大きいだろうし印象も強く残ったことだろう。

この経験をぜひ次の世代につないでいってほしいものである。
AR_D3S1149この日は雲が厚く、夕焼けを見る展望スポットへ来る人も少なかった。「やっぱりダメだったね、もう帰ろうか」と言おうとした瞬間、エアーズロック自体が発光し始めた。雲は依然空を厚く覆い、手前の草原にも光はない。まさに、大岩が灼熱のマグマのように光を放っていた。わずか数分のドラマを、身を震わせながら見つめるしかなかった。

AR_D3S1198エアーズロックの発光が収まった直後の西の空を見ると、今度は雲が焔のように燃えていた。2カ月間の旅の中で一番きれいな夕焼けだった。この日あきらめずに展望スポットに来ていたごく少ない人たちへの、自然からのプレゼントである。

CP_D3S1505エアーズロックからスチュアートハイウエイでメルボルンへ戻る途中、夕闇迫るロードハウスで2編成のロードトレインと遭遇した。どちらも牧場からの牛を運ぶ専用のトレーラーを3両牽引する最大級のもので、全長53.5m、120頭もの牛を運ぶ。ロクマルと比較してもらえばその大きさは説明不要だろう。

KIM_D2X0261キンバリー地方は雨期明けすぐということもあって、道路の閉鎖区間がまだ残っていた。ギブリバーロードから分かれるカランブルロードも通行不可だったので、ミッチェルフォールという3段に流れ落ちる滝を見に行くことはできなかった。キンバリーでも最奥の滝なので是非見ておきたかっただけにショックは隠せない。

KIM_D3S8773ギブリバーロードに入る前に道路状況を知らせる案内板がある。ギブリバーロードは一部区間で車両重量制限があるが全線開通。一方、カランブルロードは全面閉鎖であることがわかる。乾期ならば心配することはないが雨期には重要な情報源である。

KIM_D3S8855コックバーンレンジの独特の姿を背景にギブリバーロードがペンテコストリバーを渡る地点は、キンバリーの道路の中でも最も美しい風景のところとして有名である。水の流れが絶えることはなく、乾期ならば水深も浅いので100mほどの渡河が安心して楽しめる。

KIM_D3S8895KIM_D3S9065ボアブはキンバリー地方に独特の木である。ここは雨期には川となる場所で、流れに沿って大きなボアブがたくさん育っている。特に観光スポットではないので地図には何の情報もない。

KIM_D3S9024“秘密”のボアブの谷でブッシュキャンプをした。車の脇にスワッグを広げ満天の星の下寝る。翌朝は朝日が長い影をつくる中、朝食を食べる。今回の旅でもブッシュキャンプはそれほど多くはなく、ほとんどはキャラバンパークと呼ばれるキャンプ場で夜を過ごした。

KIM_D3S9148KIM_D3S9156道路脇に落ちていた厚い金属片がタイヤに突き刺さってパンクをした。この日はその場で修理をした。慣れていさえすれば、チューブタイヤにリングホイールという組み合わせはどこでも簡単に修理ができる。便利な組み合わせだが、立てつけが悪いと最悪の組み合わせにもなる。

KIM_D3S9324どこにいても毎日夕日が楽しめた。こちらでは太陽は最後まで赤く輝き続けるので、車のボディに美しい夕景が広がる。

NP_D2X0019ナラボー平原にはオーストラリアの道路でもっとも長い直線区間がある。それでなくても一直線に続く道路が多いが、146㎞も直線が続くとさすがに飽きてくる。100㎞内陸を走る大陸横断鉄道は478㎞という世界一の直線区間をもつ。

NP_D2X0054メンバーの中の鉄チャンのたっての希望で大陸横断鉄道を走る列車を見に行けるようにコースを設定した。キングーニャという場所で列車を待とうということになったが、わずか20分ほどで東行きの貨物列車が走ってきた。100両近い貨車を引っ張って轟音をあげて通過していった。

NP_D3S0865断崖で一気に終わるナラボー平原の地の果てをコンボイで走る。石灰岩の大地の端はいつ崩れ落ちても不思議はないくらいぼろぼろに風化していた。

PIL_D3S9354鉄鉱石を運ぶ専用鉄道でレール保守をするランドクルーザーVDJ79ハイレール。キングキャブにカスタマイズされていた。

PIL_D3S9402トムプライスから鉄鉱石を積出港まで運ぶリオティントの鉱石列車。ディーゼルエレクトリックの機関車が3重連で240両の貨車を牽引する。普段なら1時間に数本は走るというが、この日はダイヤに乱れがあってそれほど会えなかった。

PIL_D3S9413鉱石運搬の専用鉄道のアクセスロードを走る6×4に改造されたランドクルーザーVDJ79。

PIL_D3S9483ピルバラ地方の鉄鉱山に囲まれるようにカリジニ国立公園がある。酸化鉄の地層を川が切り込んだ深い峡谷がたくさん走る。近づいていたサイクロンの影響で大雨が降りタープを張って夜を過ごしたが、朝にはキャンプ地は水たまりに、スワッグは床下浸水した。

PIL_D3S9539少し前まで使われていた巨大なダンプトラックが道路脇に展示されていた。今はもっと大きなダンプが使われているが、これでも十分巨大だ。

PIN_D3S0261ヘッドライトに照らし出されるピナクル砂丘の石灰岩の柱。さまざまな形の柱が砂丘から無数に突き出る。特に夕方が幻想的だ。
SB_D2X0198ペロン岬への砂の道を走る。低い灌木の間に延々と続く道の先にインド洋が広がる。

SB_D3S9584太古の海で初めて光合成を行ったというストロマトライトが見られるシャークベイ。ストロマトライトという藻が海中の砂などを固着してだんだんと大きくなり、このようなマッシュルーム型の「岩」になり浅瀬に広がる。一帯は世界遺産に登録されている。

SB_D3S9638大陸最西端のスティープポイントに向かう。砂の道はここから深くなり、タイヤの空気圧を下げていても難渋する登りになった。

SB_D3S9648スティープポイントには四駆でなければ行くことができない。標識に「4WD ONLY」とあれば絶対に四駆が必要となる。

SB_D3S9973ペロン岬へ行く四駆の道の入口にタイヤの空気圧を下げるように注意書きがある。トラクションを増して走りやすくすると同時に道へのダメージも少なくなるからだ。帰るときはここで空気を入れてタイヤ圧を元に戻せるようになっている。コンプレッサーを持っていなくても安心して空気圧を下げることができる。